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相続対策

 近年、相続対策・事業承継対策という言葉をよく耳にするようになりました。「相続対策」については平成27年度相続税法改正で、相続税が課税される件数が増加したことに起因するということが挙げられます。また、2018年のデータによると亡くなられた方の遺族が相続税を払わなくてはいけない割合は、わずか8%という結果が出ています。つまり92%の方の遺族は相続税が課税されていないということです。それでも相続対策は必要なのですが、それはどういうことなのかをこのページで紹介していきます。


法定相続人って誰?

 相続対策を考えるときに、遺言書を作成するしないにかかわらず大事なことは、自分が亡くなった時に財産を受け取る権利のある人は誰なのかを理解しておくことです。権利のある人を考慮せずに遺言書で遺産分割を決めてしまうと、争いが起こります。また遺言書が無い場合は遺族から「法律通りに分けてくれ」とか、「いや、親の面倒をみてきたのは私だから」などと、スムーズに協議が進まない場合がでてきます。そこで、「法定相続人」とは誰なのかを理解していただいて、そのうえで相続対策について考えてみます。


 上の図では「本人」という人が亡くなった場合の相続人を表しています。

配偶者は必ず相続人になります。さらに①(相続第1順位)の枠でくくった「子」が相続人になります。配偶者と子がいれば相続人はこれ以上広がりません。子の中ですでに亡くなっていた場合でも孫がいれば、子と同じ扱いで相続人になります。


子がいなければ直系尊属が改めて相続人になります。②(相続第2順位)の枠でくくった人。つまり、配偶者と父母、父母がいなければ祖父母が相続人です。


子も父母もいない場合には③(相続第3順位)の枠でくくった兄弟が改めて相続人になります。兄弟の中ですでに亡くなっている人がいる場合は、その子(甥や姪)が兄弟と同じ扱いで相続人になります。


 法定相続人と呼ばれる人は、①~③までの人たちのことです。ポイントは配偶者以外で①の該当者がいれば②、③は該当になりません。また子がいなく②の該当者がいれば、③は該当になりません。

 もう一点、①、②、③はそれぞれ配偶者との法定相続割合が違いますのでご注意ください。


遺言書を作成する場合の相続対策

 遺言書は相続が発生したときに最も強い力を持っています。法定相続割合も無視できます。ですから自分の財産を誰に受け取ってもらうかを自由に決めることができます。ですが、法定相続人には最低受け取れる財産割合(遺留分)を主張する権利があります(相続第3順位③にはありません)。これを無視した遺言書を作成すると、受け取る権利のある相続人から「遺留分損害額請求」という訴えを起こされ、家族関係がぐちゃぐちゃになってしまいかねません。


遺言書を作成しない場合の相続対策

 亡くなった方が遺言書を書いていなかった場合の親子の会話例をあげてみます。

  • 母:お父さんが亡くなる前に「家と若干の財産は、お母さんと長男に引きついでもらいたい」って言っていたわね。
  • 嫁いだ娘:でも、うちの主人は「うちにも財産を受け取る権利があるはずだぞ」って言ってきかないのよね。

 この会話は実は結構多いのです。嫁いだ娘は姓も変わり嫁ぎ先の家族の一員となっています。娘さんも辛い思いで話しているかもしれませんが、これは正当な主張ということになります。しかし、財産の中身は土地建物が主で、現預金は少ないとなればどうしたら良いのでしょうか。何かしらの対策をしておかなくてはいけません。


 このケースでは、加入中の生命保険があれば、死亡保険金受取人に娘さんを指定する。もしくは配偶者と長男、娘と複数人を指定するという方法も考えられます。死亡保険金の受取金額を決めるときに留意するのが、先ほどの「遺留分」です。遺留分の計算方法などはご連絡いただければご説明いたします。


 相続が発生したときから、それまで仲の良かった家族がいがみ合い、争うことになったという例は、決して少なくありません。いつまでも家族縁者が仲良く暮らしていけるように、相続対策もしっかり考えてみてください。

 

 さて、冒頭の亡くなった方のうち92%は相続税支払の必要が無い。にも拘わらず相続対策は必要だということに関してですが、相続財産が多額にのぼる場合は、生前にしっかり相続対策を行っていると考えられます。一方で相続財産が比較的少なく、相続税の納付の必要がない場合は、「相続対策」を行わないことが多い。つまり家族間の争いごとが多発する原因になっていると考えられます。これはデータも公表されていますが、相続に関する訴訟全数の75%は相続税の納税義務のない遺族から起こされています。エンディングノートや遺言書を作成する場合にも、ぜひ相続対策を忘れずに盛り込むようにしてください。相続対策の実務に関しては、当相談所でご相談ください。


(文責:ファイナンシャルプランナー藏本光喜)